糖尿病はランゲルハンス島(膵島)のインスリン分泌の不足もしくは不能,又,インスリンの組織の
働きに障害或いは両方の原因による疾患である。これらの異状により高血糖,尿糖,多飲多尿,多食,
体重減少などの症状が発現する。適切な治療がされなければ死の転帰となる。インスリンは体にとって
唯一の血糖降下作用のあるホルモンである。インスリンが不足すると糖,蛋白質,脂質代謝が障害される。
障害が起きると筋肉,脂肪組織の糖の利用が低下し,肝臓ではアミノ酸などからの糖の合成が亢進される
ので,血液中の糖が増えて,結果的に高血糖となり,尿中に糖が検出される事となる。その結果,様々な
代謝障害が起きる。
  糖尿病には,インスリン依存性糖尿病(IDDM),インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)がある。
※ インスリン依存性糖尿病
    ・インスリン依存性糖尿病は犬に於いて最も一般的な型である。
    ・インスリン依存性糖尿病は低インスリン血症と例えばグルコースなどを投与した後に
            内因性インスリンの僅かな増加或いは欠如が特徴的。
    ・病因は多要素からなり,インスリン依存性糖尿病発症の原因として
         ○遺伝的素因
         ○感染
         ○運動不足,肥満,妊娠,精神的ストレスなどの環境因子
         ○犬に於いて免疫介在性回腸炎と膵炎
         ○?細胞の機能消失はインスリン依存性糖尿病で生涯インスリンが必要とされる。
         ○インスリンに対する拮抗物(抗インスリン抗体)の生成。
         ○若い犬ではランゲルハンス島の発育不全。
         ○過剰なグルカーゴン産生が主因と言われる説もある。
         ○ホルモン(エストロゲン,プロゲステロン)の濃度上昇,又,コルチコステロイドの長期的
             大量投与などは,発症,症状の悪化を招く。
            ◇ 症状
       ・高血糖により尿糖が起こるまで発現しない。
       ・多飲多尿,多渇,多食,肥満,体重減少,膀胱炎,夜尿の何れかをほとんどの動物が
         経験している(これらの症状は潜在的に糖尿病合併症と関係する徴候を伴っている事がある。)
       ・白内障により突然失明が,糖尿病が原因の場合もある。
       ・糖尿病の多くの犬,猫が肥満であるが,全身状態は良好。
          (糖尿病をそのまま放置した場合体重は減少する)
       ・糖尿病の猫の場合,歩く時踵の関節を接地する様な姿勢で歩く。
           (糖尿病の影響で起きた神経障害が原因と考えられる。)
       ・糖尿病性ケトアシドーシスを伴う犬,猫は意気消沈,虚弱,呼吸促迫,嘔吐,
              又,アセトンの強い口臭がする。
       ・症状が新興してくると,食欲不振,嘔吐,脱水が起き,重篤な例えは糖尿病性昏睡となり
            死の転帰となる。
       ・糖尿病で最も用心しなければならないのは,全身に波及してくる合併症で
            動物では白内障,糖尿病性網膜症,糸球体硬化症などの報告がある。
          ◇ 食餌療法
       ・糖尿病患犬,全てに食餌療法は必要である。
       ・食餌療法の目標
          a,肥満解消,
          b,食餌摂取の時間,食餌に含まれているcalorieを一定にする。
          c,食後のcalorieの変動を最小限になる食餌にする。                                          
※ 繊維が多量に含まれている食餌は,体重削減に有効的であり,腸管からのグルコースの吸収を
     遅延させて,食後の血糖の変動を緩和させる。又,高血糖の管理を強化させる事にもなる。
○ 痩せた糖尿病の犬,猫に繊維質が高く含まれている食物を与える時は,注意が必要である。
    繊維質の高い食物は体重増加を妨げる低カロリー食であり,体重が減少する可能性がある。
○ 痩せた糖尿病の犬,猫には,初めは高カロリーの低繊維の食餌を与えて正常な体重になってから,
     徐々に繊維質の高い食餌に切り替える方が望ましい。
合併症と主な症状
 
      合併症                         主な症状                    
 ケトアシドーシス              嘔吐;意気消沈;クッスマール呼吸(遅く深い呼吸);虚脱  
 白内障                    失明                                 
 網膜障害                  検眼鏡的障害                            
 神経障害                  虚弱                                  
 膵炎                     嘔吐;腹痛                              
 外分泌性膵不全              下痢;体重減少                           
 肝脂質症                  肝肥大                                
 腎糸球体症                 乏尿性腎不全                           
 細菌感染症                                                     
 泌尿器                    膀胱炎;腎盂腎炎                         
 呼吸器                    肺炎(咳嗽,呼吸困難,発熱)                  
 皮膚                      膿皮症                                  
 
 
参考文献  サウンダース小動物臨床manual
        犬の診療最前線
        犬の臨床
        犬の病気             

 
       
   糖尿病は,患犬には多大な肉体的,精神的負担があり,
       飼い主には治療に際して多大な精神的圧迫,経済的圧迫があり,
患犬の生涯に及ぶ双方の負担が避ける事の出来ない疾患であり,糖尿病が発現する前の
     飼い主の避ける事の出来る予防には,極力の努力をされるべきであると思う。