☆ 犬糸状虫(フィラリア)症
 
  ◇ どの様にして感染するか。
 犬糸状虫の感染が原因で,多くの蚊に吸血される事によって伝播(広くまきちらす事)する。
 
  ◇ 生活史
 ・雌の蚊が中間宿主で,感染した犬の血を吸う時にミクロフィラリアが,蚊の体内に入る。
   このミクロフィラリアを第1期幼虫という。
 ・第1期幼虫は,2〜2,5週間後に蚊の体の中で,第3期幼虫になる。
 ・蚊が血を吸ったときに出来た刺し傷から,犬の体に移行し,犬はフィラリア感染を起こす。
 ・幼虫は,約100日間皮下組織や毛細血管および小動脈外側に位置する間葉系細胞などを移動している。
   この100日の間に幼虫は2回脱皮して第5期幼虫となる。
 ・第5期幼虫は,感染後3〜3,5ヶ月で血管の中に入っていく。
 ・犬糸状虫の若い成虫は,感染後5〜6ヶ月で肺動脈に到達する。
 
  ◇主な事柄
 ・血管の末端からフィラリアの子供、子虫、幼虫、などが見つかるようになるのは,蚊からの感染後6ヶ月から
    認められる。
 ・重複感染が起こらなければ,末端血中のミクロフィラリアの数は6ヶ月間は増加傾向にあるが,
      その後は減少していく。
 ・フィラリア成虫が寄生しているものでは、子虫(ミクロフィラリア)を産んでいますので、普通は、血管の中に
   たくさんのミクロフィラリアがいるはずです。ですから、血液を顕微鏡で観察しますと、ミクロフィラリアがいる
     ので、フィラリア感染、といえるのです。
 ・抗体検査(特殊な検査キット)ができるようになりましてから、ミクロフィラリアがいないのに、フィラリア成虫が
    寄生している例がたくさん見つかっています。それをオカルトといいます。いないと思っていたのに、いた、
       という意味合いででしょうが。
 ・どうしてオカルトになるかといいますと、上記のように肺毛細血管のところで白血球がマクロファージを
    捉えます。血液中のミクロフィラリアは、全て、肺血管でつかまってしまうために、血液中には認められなく
     なる、ということなのです。
 ・肺血管でつかまったミクロフィラリアはどうなるかといいますと、白血球にどん食されるのですが、理由は
    私は知りませんが、好酸球がたくさん集まってくるようです。好酸球がたくさん集まりますと、炎症物質を
     出しますから、好酸球性肺炎を引き起こす、ということのようです。
 ・フィラリア成虫が寄生しているのに、ミクロフィラリアが存在しない理由としましては、その、好酸球が関与
     する好酸球性肺炎、フィラリア予防薬がミクロフィラリアを殺したために起こる場合、高容量の
      イベルメクチンでフィラリア成虫が子虫を産めなくなった場合、などがあります。
 
  ○イベルメクチン
    薬名 
           ◇感染の広がり方
 ,感染率の高い地方で予防しなかった場合,ほぼ全犬に感染がみられる。
 ・雄犬は雌犬よりも感染率が高い,たぶんそれは,家の外で飼われている事が多い事と関係がある。
 ・家の外で変われている犬は,家の中で飼われている犬よりも,4〜5倍の割合で感染する可能性が高い。
 
  ◇犬糸状虫症の機序
 ・犬1頭に寄生する犬糸状虫は,凡そ1〜250匹以上と差があり,成虫の数と症状の程度には,犬糸状虫の
   影響があるといえるが,時として,1匹の犬糸状虫が弁にからまり死に至るという事がない事もない。
 ・犬糸状虫症は,ほとんどが慢性症だが,時には急性症状により,急いで犬糸状虫の摘出をしなければ命に
    関わる場合もある。
 ・犬糸状虫が寄生するのは主に,犬の心臓,肺動脈に寄生する。
 ・成虫の寄生数が多すぎて,三尖弁周辺に移行した場合,急性心不全を起こす。
 ・犬糸状虫が肺動脈に寄生すると,血管内膜炎,血栓,肺実質の障害が起きる。
 ・犬糸状虫の分泌,排泄する物質によって症状は更に多様になってくる。
 ・障害が進行すると右心不全を起こす。

 
  ◇症状
 ・咳をする。
 ・皮毛が荒れてくる。
 ・体重が減ってくる。
 ・運動がおっくうになってくる。時には失神する場合もある。
 ・お腹に水が溜まる。浮腫(むくみ)が起きる。
 ・呼吸困難,呼吸粗励(粗く激しい)
 
  ◇検査方法
 ・心音に雑音があるかないか。
 ・血液検査 (ミクロフィラリアの有無,抗体の検査によって成虫の有無,軽度の好中球,好酸球増多症,
      AST,ALTの上昇,
        低アルブミン血症,高コレステロール血症などを,必要に応じて調べる)。       
 ・心電図検査 (右心肥大の有無)
 ・胸部X線検査 (右心負荷の程度,犬糸状虫症の病勢)
 ・心エコー (右心室負荷の程度,三尖弁の状態,主肺動脈の拡張の程度,肺動脈内の犬糸状虫の検出)。
 
  ◇予防
 ・予防薬を服用させる。
 ・地域に差はあるが,概ねの地域において5月末〜11月末までの投薬
 ・蚊に刺された事により,ミクロフィラリアが体内に侵入し,それが心臓に達するまでに殺す必要がある。
 
   ◇治療選択方法
  1,手術でフィラリア成虫を取り除く方法
     フィラリアの感染が多い場合に用いられることが多い方法。
     アリゲーター鉗子という特殊な器具を使って、首の頚静脈という血管から、心臓にいるフィラリアを
        つり出します。
  2,注射による駆除
    イミトサイトというフィラリア駆除剤を使って心臓内のフィラリア成虫を駆除します。
     駆虫率は高いです。欠点はヒ素剤なので、必ずしも安全ではありません
        (でも、昔の薬よりヒ素の量は半分以下になっています)。
  3,ある種類のフィラリア予防薬を長期投与する
     この方法は、まだ試験段階でちゃんとした治療法とは言えませんが、
     カルドメックチュアブルPというフィラリア予防薬を16ヶ月間、月に1回長期投与することで、
       フィラリの成虫が56.3%減少、つまり半分になるという報告が昨年(2000年)されました。
       フィラリア成虫の完全駆除はできませんが、比較的安全に成虫の数を減らせる方法として
          注目されています。
  4,フィラリア成虫にはなにもアプローチせず、今後予防を行い、フィラリアの数を増やさないようにする。
     フィラリアの成虫の寿命が4〜5年なので、4〜5年予防をちゃんと行えば、心臓のフィラリア成虫
        はいなくなります。
 
        参考文献 サウンダース小動物臨床マニュアル  文永堂
                 犬の診療最前線             interzoo
                イラストでみる犬の病気         講談社  

  

       治療選択方法は,Dr. pooのWanWan Hospital 旧・掲示板より転用 2001/05/15