☆クリプトコックス症  
  Cryptococcus属のCryptococcus neoformansにより起される疾患であるが,ヒトをはじめ各種動物に
感染する。副鼻腔炎や肺炎から進行すると全身感染となり特に中枢神経障害が顕著となる。単独感染が
原因となるのではなく,他の疾患が背景として存在する事がCryptococcusの増殖原因となる場合が多い。
消耗性疾患,リンパ肉腫,免疫不全状態,抗生物質による菌交代症,抗腫瘍薬やステロイドによる抵抗力
の低下の際に全身的に観察される。全身感染になると治療が困難な症例が多い。
     ◇原因
    1,病原はCryptococcus neoformansである。
        本菌は世界中に広く分布する真菌で鳥類の排泄物が混入した土壌に存在する。
    2,広域抗菌剤,抗癌剤,免疫抑制剤,避妊用ホルモン製剤,高カロリー輸液,
        留置カテーテルの使用などにより感染抵抗力の低下した状態で全身性に感染する
         ケースが増加しいる。  
 
    ☆包条虫   
  包条虫属Genus Echinococcusに分類される条虫は現在までに4種類が確認されているが,
その中でも,単包条虫Echinococc us granulosus,多包条虫E,multilocularis,フォーゲル包条虫E,
vogeliの3種類の幼虫(包虫)は,それぞれヒトに感染して包虫症と呼ばれる人畜共通の感染症
(ズーノーシス)を引き起こす事が知られている。わが国においては,単包虫と呼ばれる単包条虫の
幼虫が感染する単包虫症と,多包虫と呼ばれる多包条虫の幼虫が感染する多包虫症が報告されている。
フォーゲル包条虫症の発生は,今のところ中南米に限られている。単包条虫は体長3〜6o,多包条虫は
1.2〜4oほどの極めて小さい条虫であり,犬科動物(まれに猫科動物)が終宿主となる。中間宿主は
多包虫ではネズミ類,単包虫では約60種類の動物が確認されている。ヒトは本来の中間宿主ではないが,
感染すると中間宿主の体内と同様な発育をする。
   ◇ライフスタイル
  終宿主の糞便とともに外界に輩出された虫卵は,経口的にヒトあるいは中間宿主に摂取される。
虫卵は,小腸上部で幼虫(六鉤幼虫)に孵化した後,腸壁の血管に侵入し,血流によって,種々の
臓器に運ばれて定着する。最も多いのは肝臓,肺であり,腎臓,脳,骨などに定着する事もある。
幼虫は,定着した臓器内で小さな球状の糞を形成し,除々に発育して母包虫からはいくつもの新たな
包(娘包虫)が形成される。単包虫の母包虫は内側に娘包虫を形成するが,多包虫の母包虫は外側に
出芽する形で娘包虫を形成するため,悪性腫瘍と同様に周辺組織に浸潤性に病変が広がる。なお,
母,娘包虫内では,終宿主体内で成虫となる原頭節が数個〜十数個形成されるが,中間宿主の体内
においてはこの原頭節や娘包虫からも新たな包虫を形成する事が可能であり,これらは血流に乗って
種々の臓器へと転移する。特に多包虫は包の外側に出芽するために転移が生じやすい。包条虫は他の
条虫類とは異なり多くの片節を形成しないために,中間宿主の体内において可能な限り増殖して種の
維持を図るという特性がある。1個の母包虫から形成される原頭節は200万個にも達することがある。
これらは全て終宿主体内において成虫へと発育する能力を有している。包虫を形成した中間宿主を
終宿主である犬科動物が摂取することによって,ライフサイクルが完成する。
   ◇感染源および感染経路
  感染は感染した終宿主に接触した手指から,あるいは感染した終宿主の糞便に汚染された飲食物を
経口的に摂取することによって成立する。
   ◇国内におけるヒトでの発生状況
  単包虫症は,九州,四国,本州で散発しており,1989年までに約70例が報告されている。また,
単包条虫の分布する地域からの輸入肉に感染が認められる場合があり,多包虫症は約300症例が
報告されているが,その多くは北海道および東北地方におけるものである。わが国においては,北海道に
生息するキタキツネから感染する多包虫症が重要視されているが,犬科動物のすべてが終宿主になり得る
ことから,飼い犬や野良犬などからの感染の可能性も否定できない。また,本州以南においても北海道から
移入された牧草や牧草に混入したネズミの死骸などから感染する。
      ◇終宿主(犬科動物)の症状
  包条虫の成虫が終宿主である犬科動物の腸管内に寄生した場合には,カタル性腸炎を引き起こすが,
濃厚感染でない限り,ほとんどの場合症状を発現するには至らない。                            
   ◇ヒトの症状
  症状は,包虫の発育につれて周辺組織が圧迫される事によって引き起こされる。包虫の集塊は
最終的には直径5〜6cm,場合によっては20cm程度に発育するが,その発育程度が非常に緩慢
なために感染後数年〜十数年経過して初めて症状が発現する場合が多い。主な症状として,肝臓
に寄生した場合には,上腹部の膨満感,黄疸,右季肋部痛,肝機能低下,腹水貯留,門脈圧亢進,
肝不全などが認められ,肺に寄生した場合には咳,血痰,胸膜炎などが認められる。また,腎臓に
寄生した場合には腎不全や血尿などが認められ,脳では神経症状が認められる。さらに,骨に寄生
した場合には病的骨折などが認められる。なお,包虫内部の液体が血液に混入するとアレルギー症状
やアナフィラキシ-ショックを引き起こすことがある。転移によって病変が数ヶ所に及ぶ場合には,症状
よりは複雑なものとなる。                   
 

        
犬の診療最前線・interzoo より