☆薬物に起因する免疫力低下  
  現在,免疫介在性疾患や腫瘍の症例に対して糖質コルチコイド及び抗腫瘍薬の投与により患犬を
良好にコントロール出来る様になってきたが,半面その薬物の副作用により頭を悩まされる事も多い。
     1,糖質コルチコイド
  糖質コルチコイドの免疫抑制作用は白血球の移動経路を変化させる事,効果細胞としての白血球機能
を変化させる事,及び炎症を介在する可溶性仲介物質の産生や放出を抑制する事による。これらの作用に
より循環血中の好中球の増加,リンパ球減少症好酸球 減少症が起こる。リンパ球の減少はTリンパ球が
骨髄,脾臓及びリンパ節に選択的に再分布されるために起こり,Bリンパ球への影響は少ない。またリンパ球
は,分化・増殖能の低下,細胞表面のレセプターの減少,T細胞のIL−2産生の抑制,ヘルパー及び
サプレッサーT細胞活性の変化などの影響を受ける。単球やマクロファージに対しては,走化性,貪食,
細胞質内殺滅,抗原提示,サイトカイン産生または放出などの機能を低下させる。
     2,抗腫瘍薬
  アルキル化剤は非細胞周期性の薬剤であり,全ての細胞に対してのその毒性作用を示し,
代謝拮抗剤は細胞周期に特異的に作用して通常の細胞分裂を阻害する。これらの作用により骨髄は
抑制される。また他の抗腫瘍薬(植物アルカロイド製剤,シクロスポリンなど)においても副作用として
骨髄抑制や骨髄毒性がみられることがある。骨髄毒性は血液中の全ての細胞成分に影響し,貧血と
血小板減少は生命を脅かす事があるが,白血球の方が寿命が短く予備量も少ないので白血球減少と
それに付随する感染の危険が重要で,より一般的な問題となる。
   
      ☆アナフィラキシー   
  アナフィラキシ−は犬ではまれな疾患であり,IgE介在性のものとIgE非介在性のものがある。
1,IgE介在性アナフィラキシ−:これは感作された肥満細胞の表面上で起こるIgE抗体と抗原の
相互作用である。
  1)感受性のある個体では抗原に曝露された後IgEが産生される。
  2)IgE分子はエフェクター細胞の表面上にあるFCレセプターに結合する。
  3)その後の曝露に続きIgEの架橋が起こり,これが肥満細胞や好塩基球から化学物質
    (一次メディエーター)の放出の引き金となり,またアナフィラキシ−の二次メディエーターの
       合成が開始される。
2,IgE非介在性アナフィラキシ−(アナフィラキシ−様反応):このアナフィラキシ−様反応は2つに分けられる。
  1)補体カスケードの活性化によりアナフィラトキシンであるC3a,C5aが産生される。
    これらが肥満細胞の脱顆粒と一次メディエーターの放出を促す。
  2)原因となる薬物や他の化学物質が直接肥満細胞に作用して脱顆粒と一次メディエーターの放出を起す。
    ◇アナフィラキシ−の一般的な原因
 ・ホルモン:インスリン,副腎皮質ホルモンなど。
 ・抗生物質:ペニシリン誘導体,クロラムフェニコールなど。
 ・非ステロイド系消炎剤:アスピリン,イブプロフェンなど。
 ・中枢神経系抑制剤:マレイン酸アセプロマジン,塩酸ケタミンなど。
 ・駆虫薬:塩酸ブナミジン,塩酸レバミゾ−ルなど。
 ・その他の薬物:アミノフィリン,EDTAなど。
 ・有毒生物:ヘビ,トカゲ,膜翅類など。
 ・食餌:ミルク,魚介類,卵の白身など。
   ◇肥満細胞や好塩基球によって放出される物質(一次メディエーター)
 ・ヒスタミン
 ・好酸球走化性因子
 ・好中球走化性因子
 ・蛋白分解酵素
 ・ヘパリン
    ◇肥満細胞や好塩基球によって産生される物質(二次メディエーター)
 ・プロスタグランジンE2,D2,I2
 ・ロイコトリエンB4,C4,D4,E4
 ・トロンボキサンA2
 ・血小板活性化因子                              
 

           
  犬の診療最前線・interzoo より