☆犬ジステンバー  
  本病は犬における代表的な急性発熱性感染症で,パラミクソウィルスにより経口または経気道感染する。
本病は世界各地に発生し,主に消化器症状と呼吸器症状による多様な病型を発現する。移行抗体の消失
した幼若犬とワクチン追加接種を適切にしていない老齢犬の死亡率が高い。また最近の研究ではワクチン
歴のある犬でも,神経症状のみを発現し,消化器・呼吸噐症状のない犬ジステンバーが注目される様に
なってきている。
  ◇原因
1, 病態は,Paramyxoviridae の Morbillivirus属に属する。−10℃で半年以上,4℃で7〜8週,
   室温で7〜8日感染力を保持する。経口または経気道感染し,潜伏期は3〜6日(平均4日)である。
2,初期はウィルス感染による症状が中心で,発熱はいったん平熱に復するが,2〜3日後には細菌による
     二次感染が起こり,数週間症状が持続する。
3,患犬との接触が大多数の感染原因であるが,汚染物等の吸入も原因となる。本病は3年毎に
  流行するといわれ,12月から2月に多く,乾燥等の冬季因子による気道粘膜障害が誘引と推察される。
 
    ☆犬伝染性肝炎    
  犬伝染性肝炎は犬の代表的な急性敗血症性感染症でアデノウィルスにより接触または汚染物により
感染する。本病は世界各地に 発生し,初期は犬ジステンバーとの鑑別が難しい消化器症状,呼吸器症状
による多様な病型を発現する。移行抗体の消失した幼若犬とワクチン接種をしていない成犬にみられ,
死亡率が高い。
  ◇原因
1,病原はAdenoviridaeのMasatadenovirus属に属する。抵抗性が強く,注射針に付着したウィルスが
    3〜11日生存した例がある。回復保毒犬は尿中に6〜9ヶ月ウィルスを排出し,重要な感染源となる。
2,患犬との接触,尿など汚染物を介して感染するが,突然急死するものから,不顕性感染に
    終わるものまで同腹の子犬においても多様な経過をたどる。
 
   ☆犬パルボウィルス感染症 
  極度の下痢,脱水,白血球減少症を示し,腸管の二次感染による致命率の高い感染症である。
腸管以外でも感染し,心筋に核内封入体を認め,心筋炎で死亡するケースもある。経口感染す。
本病は世界各地に発生し,消化器症状,心筋症による呼吸困難などの多様な病型を発現する。
移行抗体の消失した幼若犬とワクチン追加接種を適切にしていない老齢犬の死亡率が高い。
   ◇原因
1,病原体はParvoviridasのParvovirus属に属するウィルスで,猫汎白血球減少症の病原ウィルスと
血清学的に完全交差する。
2,消毒剤に対して極めて抵抗性が強く<糞便中で少なくとも1週間は感染性を示す。
3,年齢により症状の程度が異なる。子犬では症状が激しく致死率が高い。10歳を超える老犬からも
      ウィルスが分離される。季節に無関係に発生している。
         
     ☆狂犬病    
  狂犬病は日本においては1957年以降発生がないが,世界的には減少の傾向は認められない。
狂犬病ウィルスは哺乳動物に感受性を認め,犬では潜伏期が長い為(1週〜3ヶ月以上,平均3週間)
原因となる咬傷そのものや飼い主の記憶が判然としない事も多い。伝染性形態は疫学的に@森林型,
A都市型に分かれ,前者は欧米とアメリカに多く,後者は東南アジアや日本,英国などである。
いずれにしても,犬が発症すると唾液腺のウィルス排出と神経症状による攻撃性の効果で咬傷を
介しての狂犬病の伝染を引き起こす。発病7日前からや間欠的に3年間ウィルスを排泄する犬が
いるという報告もある。バンコクの狂犬病の8%はワクチン接種歴のある犬といわれており,必ずしも
ワクチン接種犬が安全ではない。
  ◇原因
1,病因はRhabdoviridaeのlyssavirus属に属し,向神経性が強い。各種の哺乳動物や鳥類,
     昆虫の体内でも増殖する。南極とオセアニアを除く全世界に蔓延しており,
      ウィルスは乾燥しなければ常温で数ヶ月生存する。潜伏期は1週〜3ヶ月齢以上で,
       ヒトでは1年以上の例もある。
2,感染の流行型は森林型と都市型の2つがある。欧米やアフリカの流行は前者で,野生のキツネや
   オオカミの集団の中で流行していたものがヒトや家畜に感染し,二次,三次の流行が犬を介して起こる
    ものである。日本や英国,東南アジアの流行は後者で,野生動物の流行なしに放浪犬の間で
     狂犬病が伝播するものである。
3,発症の特徴は致死率100%の脳炎であり,侵入経路は咬傷が多い。                     
 

      ☆クリプトコックス症  
Cryptococcus属のCryptococcus neoformansにより起される疾患であるが,ヒトをはじめ各種動物に
感染する。副鼻腔炎や肺炎から進行すると全身感染となり特に中枢神経障害が顕著となる。単独感染
が原因となるのではなく,他の疾患が背景として存在する事がCryptococcusの増殖原因となる場合が
多い。消耗性疾患,リンパ肉腫,免疫不全状態,抗生物質による菌交代症,抗腫瘍薬やステロイドに
よる抵抗力の低下の際に全身的に観察される。全身感染になると治療が困難な症例が多い。
     ◇原因
1,病原はCryptococcus neoformansである。本菌は世界中に広く分布する真菌で鳥類の排泄物が
   混入した土壌に存在する。
2,広域抗菌剤,抗癌剤,免疫抑制剤,避妊用ホルモン製剤,高カロリー輸液,
   留置カテーテルの使用などにより感染抵抗力の低下した状態で全身性に感染するケースが増加しいる。 
 
          犬の診療最前線・interzoo より