☆熱射病     
  熱射病とは高温環境によって,体温調節機能が破綻し,高体温による細胞障害が全身臓器に及んで
多臓器不全(MOF)の状態となったものである。日射病は太陽光線による皮膚と筋肉の血流増加のための
相対的な循環血液量の減少と脱水による循環不全で,上記と区別する。
       ◇原因
   1,高温,多湿環境時期に車や室内などに閉じ込められる事で発生。
   2,短頭種,上部気道疾患,循環器疾患,肥満,老齢動物で好発傾向。
 
    ☆電撃傷     
  本症は生体内通電による障害である。生体の電気抵抗は,骨>皮膚>筋肉>血管>神経の順に
小さくなり,神経系,心血管系,筋肉などで電気障害を来しやすい。原因としては電気コードなどを咬む事に
よって起こる事が多く,電流の性質や強さにより,意識障害,呼吸停止,心室細動,痙攣などがみられる。
   
    ☆動揺病  
  本症は乗り物の動揺によって引き起こされる嘔吐や流涎,失調性歩様などを主症状とした自律神経失調
状態と考えられている。原因としては運搬に対する緊張や恐怖感などの心因性ストレスである。
また前庭系に対する動揺刺激あるいは視覚刺激などである。
 
    ☆熱傷 
  本症は熱エネルギーによる皮膚損傷であり,受傷面積と深さに基づく損傷程度のほか,合併損傷の
有無,患犬の年齢や既往症なども予後に影響するため,その重症度の診断と適切な治療方針を立てる事は
極めて重要である。
       ◇原因
   1)ストーブ,ヒーティングマットの長時間の接触
   2)火災,熱湯,蒸気
   3)電気コード
   4)酸・アルカリ化学薬品やガソリン,灯油,タールなど溶液・製剤
  ◇病態生理
  熱の物理的作用に加えて損傷組織から放出される伝達物質により,血管壁の透過性が亢進し,
膠質が血管内から間質に漏出し,血管内外の膠質浸透圧差が生じる事により浮腫が形成される。
広範囲熱傷では膠質の血管外への喪失のため,血液の膠質濃度が低下する事もあって,浮腫は熱傷に
留まらず全身に至り,その結果循環血液量減少による循環不全に陥る。犬では受傷面積15%以上で
低血流性ショックが発現し,50%以上では致命的である事が多い。ヒトにおいて血管壁透過性亢進は,
受傷後薬6時間をピークに24〜48時間くらい続く。その間は十分な輸液を行い循環血液量を維持する事が
必要であるが,血管壁透過性が正常に回復する受傷48〜78時間後には,それまで投与され血管外に
死蔵されていた輸液が再び血管内に戻る現象(re-filling現象)が起こる。これによって肺血管外水分量が
増加し肺酸素可能の低下が問題となると報告されている。その為広範囲熱傷の初期の湯液療法に関しては,
循環血液量の増加や重篤な細胞浮腫を避ける為,細胞外液ナトリウム濃度より低い電解質輸液を
行わない事や血管壁透過性亢進時期に膠質を初期段階から投与し,浮腫を増強させない事がポイント
であるといえる。
 

              
  犬の診療最前線・interzoo より