☆ノミアレルギー性皮膚炎   
  ノミによる皮膚症は,犬の皮膚科で最もよくみる疾患である。そのメカニズムはノミ刺傷とノミアレルギー
に区分される。ノミアレルギー性皮膚炎とは,遺伝的素因とは無関係に生じるノミに対するアレルギー性
皮膚炎と理解したい。犬では通常宿主特異性の低いネコノミCtenocephalides felisが問題となる。
 
     ☆アトピー性皮膚炎  
  アトピー性皮膚炎は遺伝的素因が関与した掻痒を主徴とする慢性皮膚疾患であり,IgEやIgGの産生異常
が指摘されている。犬ではアトピーとアトピー性皮膚炎がほぼ同義語として使用されている。アトピー性皮膚炎
ではあらゆる抗原がアレルゲンになるが,環境にありふれたハウスダストマイト,ノミ,食物,花粉などが特に
重要である。
 
     ☆食物アレルギー    
  食物アレルギーとは,食物に含まれる成分を摂取することにより,免疫学的機序を介して発症する有害
な反応である。これに対して非免疫学的な機序を介した有害な反応は食物不耐性と呼ばれている。臨床
でこの両者を区分するのは困難であるため,食物に起因する有害反応を食物過敏という大きな概念で
捉える考えもある。食物により掻痒が悪化する疾患としてはアトピー性皮膚炎が最も重要である。
またアトピーの関与無く特定の食物だけにアレルギー反応を示す皮膚炎もある。
 
      ☆落葉状天疱瘡  
  天疱瘡とは,表皮細胞間に自己抗体が沈着しU型アレルギー反応を介して発症する後天性水疱症
である。犬の天疱瘡は,落葉状天疱瘡,紅斑性天疱瘡,尋常性天疱瘡,増殖性天疱瘡に区分されて
いるが,このうち臨床家が最もよく経験するのが落葉状天疱瘡である。犬の落葉状天疱瘡の標的抗原
はデスモグレインTである事が示唆されている。
  
     ☆円板状エリテマトーデス 
  エリテマトーデスとは,円板状エリテマトーデス(DLE)から全身性エリテマトーデス(SLE)に至る。
臨床的および組織学的に特徴的な変化を示す。一連の疾患をスペクロラムである。病態として
V型アレルギー反応を介した自己免疫異常が推測されている。その詳細はいまだに不明であるが,
皮膚症の発現には日光照射が関与すると推測されている。犬では,皮膚に限局したエリテマトーデス
をSLE区分としている。(全身性エリテマトーデスの項=P.762=を参照)
 
    ☆脂漏性皮膚炎
  脂漏性皮膚炎は脂漏の一症状と理解されているが,本症には特徴的な湿疹がみられる事から,
脂漏が基底となった一炎症性疾患と理解する事が出来る。最近,獣医学領域においてマラセチアの
増殖が関与した皮膚炎をマラセチア皮膚炎と呼称しているが,いわゆるマラセチア皮膚炎と脂漏性皮膚炎
を臨床的に区分する事は出来ない。また両者とも全身性抗真菌剤が有効である事から,本質的に同一の
疾患であると推測されている。
  
    ☆脂腺炎 
  脂腺炎は脂腺をターゲットとした無菌性炎症性疾患である。脂腺炎の病態は不明であるが,遺伝的な
脂腺の異常,角化異常による脂腺導管閉塞,脂腺分泌に関連した脂質代謝障害,自己免疫異常などが
推測されている。組織像は特徴的であるが,その臨床像は多彩であり,しかも治療反応も多様である事から,
脂腺炎は必ずしも単一の病態による独立した疾患ではなく,いくつかの病因が関与した疾患であるとも
推測される。
 
   ☆家族性皮膚筋炎    
  家族性皮膚筋炎は遺伝性の皮膚と筋の炎症性疾患である。これまでにシェットランド・シープドッグや
コリー,あるいはその交雑種での報告が多く,その遺伝形質は常染色体優性遺伝と理解されている。
病態は不明であるが,ウィルス感染,自己免疫,血管症などが推測されている。また先天性表皮水疱症
との異同にも興味がもたれる。なおヒトの皮膚筋炎は通常後天性に生じるため,病態のみならず,
病名についても検討の余地があると思われる。 
 
 
 
    ☆無菌性結節性脂肪織炎    
  無菌性結節性脂肪織炎は皮下脂肪織の非感染性炎症性疾患であり,さまざまな病因により,
発症する疾患と理解される。病因として,肥満,物理的刺激(外傷,シャンプーやクシ),化学的刺激
(薬剤,ワクチン),脂質代謝障害(栄養,膵疾患,消化器疾患,ステロイド),免疫異常
(エリテマトーデス,薬疹,血管炎),組織球系腫瘍などの関与が推測される。本態性にも発症する。
 
   ☆若年性蜂窩織炎      
  若年性蜂窩巣炎は子犬の顔を中心に発症する無菌性肉芽腫性疾患である。病因は明らかにされて
いないが,先天的あるいは後天的な免疫学的要因の関与が推測されている。なお本症は,これまでに
若年性膿皮症と呼ばれていた事もあったが,主因として,細菌の関与が否定的であるため,現在は
使用されていない傾向にある。
 
    ☆外耳炎
  外耳炎は独立した疾患としても扱われているが,これは実に大雑把な病名である。つまり皮膚に
生じる炎症を全て皮膚炎と診断しているのとなんら変わりがない。なお耳道壁の解剖学的構造は
体表皮層と基本的に同一であるため,外耳炎は耳道に生じた皮膚炎と考えるとよい。
    
     ☆耳血腫
  耳血腫(耳介血腫)は頭部を振ったり耳介をぶつけたりした時に,耳介に著しい外力が働いたために
生ずる耳介内の血腫である。耳介が大きく,垂れた犬に多発するが,立ち耳にもみられる。一般に
外耳炎など掻痒性の疫病に続発する。
 

       
   犬の診療最前線・interzoo より