☆皮膚と皮下の腫瘍  
  表皮は被覆表皮と表皮付属噐からなり,後者はさらに毛包,脂腺,アポクリン汗腺からなる。
皮膚の上皮性腫瘍はこれら原基から発するものである。主な上皮性腫瘍良性腫瘍とその周辺疾患を
下に示す。
1,良性被覆表皮性腫瘍
  1)表皮嚢腫
  2)皮様嚢腫
2,良性付属噐腫瘍
  1)毛包分化
    毛包腫,皮内角化上皮腫,trichblastoma,毛包上皮腫,外毛根鞘腫,毛母腫,
  2)脂腺分化
    脂腺母斑,脂腺増生症,脂腺腺腫,脂腺上皮腫,
  3)汗腺分化
    アポクリン母斑,汗嚢腫,汗腺腫,汗管腫,混合腫瘍,
    ◇有棘細胞癌(扁平上皮癌)
  有棘細胞癌は皮膚,粘膜の扁平上皮に生じる悪性腫瘍であり,組織学的に表皮有棘細胞様上皮細胞の
増殖を特徴とする皮膚癌である。病因として紫外線,放射線,化学的発癌物質,乳頭腫ウィルスなどの関与が
推測されている。またガン前駆症ないし発生母地として,日光性角化症,先天性色素性疾患,色素脱失,
慢性潰瘍,皮膚炎,瘢痕などが重要である。また免疫不全状態は本症を発現しやすい。
    ◇黒色腫
  黒色腫はメラノサイトを原基とする腫瘍である。メラノサイトは皮膚以外にも脳軟膜や眼球脈絡膜に
存在する。犬の黒色腫は良性と悪性に区分されるが,後者は5〜15%と報告されている。ヒトでは誘因
として,外傷,刺激(打撲,紫外線)などの関与が報告されている。
   ◇組織球腫
  組織球腫はこれまで組織球の良性腫瘍と考えられてきたが,最近ランゲルハンス細胞に由来すると
報告された。
    ◇肥満細胞腫 
  肥満細胞の増殖性疾患である。その病理発生は不明であるが,ウィルスや遺伝的要因などの関与が
推測されている。ときに慢性皮膚炎や瘢痕から発生する。約30%が生物学的に悪性の挙動を示す。
    ◇皮膚リンパ腫 
  リンパ腫(悪性リンパ腫)はリンパ球をはじめとする免疫担当細胞系の悪性腫瘍であり,皮膚を初発
としたリンパ腫が発生する。リンパ球の発生,分化の過程が明らかにされるにしたがい,その定義や
分類が大きく変貌しつつあるが,現在犬の皮膚リンパ腫は表皮向性に区分されており,前者はT Celll,
後者はB Cell 由来と推測されている。病因は不明であるが,ウィルスの関与も推測されている。       
 
       ◇ 家族性皮膚筋炎
  家族性皮膚筋炎は,遺伝性の皮膚と筋の炎症性疾患である。これまでにSheltieやコリー,
或いはその交雑種での報告が多く,その遺伝形質は常染色体優性遺伝と理解されている。
病態は不明であるが,ウィルス感染,自己免疫,血管症などが推測されている。
または先天性表皮水疱症との異同にも興味がもたれる。なおヒトの皮膚筋炎は通常後天性に生じるため,
病態のみならず病名についても検討の余地があると思われる。
 
 
 
          犬の診療最前線・interzoo より