☆吸引性肺炎  
  誤嚥性肺炎ともいい、異物や植物などの誤嚥が原因で、肺内にこれらが停滞することによって発生する
肺炎をいう。巨大食道症や 口蓋裂,声門の閉鎖不全などの疾患や麻酔時の嘔吐あるいは気管内挿管,
投薬時の失宣など原因もさまざまである。誤嚥されて物 質の性状や停滞部位によって症状も異なるし、
吸引物質による気道の閉塞,炎症反応や肺胞上皮の障害の程度,気管支狭窄,細菌感染など病態の
状況によって、さまざまな症状が認められる。通常は著しい炎症と浮腫が観察され、出血や壊死も認められる。      
      ☆肺水腫
  肺の毛細血管壁からしょう液性の体液が肺の気管支,肺胞ならびに間質組織内に漏出し貯留した
状態をいう。原発性の疾患では なく、二次性に発現する徴候である。原因としては心因性と非心因性に
分けられる。前者は左心房ならびに肺静脈圧の上昇をもたらす 心疾患で、うっ血性心不全や僧坊弁閉鎖
不全症,犬糸条虫症,急性ショックなどに認められる。後者は脳障害などの中枢神経疾患や刺激性ガスの
気誘引,肺炎,火傷,中毒,感電などがあげられる。症状は原因となる疾患やその病状の程度、あるいは
体液の貯留部位(間質性,肺胞性)によって異なるが、多くの場合、呼吸促迫,湿性の咳嗽,チアノーゼ,
呼吸困難などが観察される。重篤な場合には血液を含む淡赤色の泡沫状の鼻汁を認め、犬座姿勢による
努力性呼吸が観察される。
     
       ☆肺血管血栓塞栓症
  本症は生前診断が難しく高度の診断技術が要求されるため、一般臨床家にはあまり知られていない
疾患でもある。しかし文献的 にはよくみられる疾患であるとされている。筆者も実際の症例や確定診断を
経験したことがないため、文献的知識のみを記載する。肺の脈や細動脈が閉塞された結果認められる
疾患で、閉塞物としては細菌,異物,空気,脂肪,寄生虫などがあげられるが、最も多いのは血栓(血餅)
である。血によって肺の血流が阻害されることにより換気が障害される。また塞栓によって侵されていない
部位の血液循環が過剰になるため肺水腫を生じることにもなるし、表面活性物質の参生低下によって拡張
不全を引き起こす事にもなる。症状としては極めて急激な呼吸困難と頻呼吸が観察される。軽い症例では
頻呼吸のみの場合もある。多くの場合頻脈が認められ、時には咳嗽や喀血がみられることもある。 
 
       ☆水胸
  水胸とは広義の意味では、炎症性あるいは非炎症性の疾患により胸腔内に漏出液,滲出液が貯留
した状態をいうが、通常では、 胸腔内に非炎症性の漏出液が大量に貯留する狭義の意味での状態をいう
場合が多い。したがって<ここでは狭義の意味での水胸に ついて述べることにする。水胸は心臓や腎臓疾患
ならびに低蛋白血症の一症状として発現する。この場合、胸腔内に貯留する漏出液は通常両側性で左右の
胸腔間を自由に移動するといわれている。最も一般的な原因としては、うっ血性心不全など右側性あるいは
両 側性の心不全があげられる。次いで多いのが蛋白質生成の低下や低蛋白血症があげられる。また、
縦隔腫瘍や胸膜腫瘍などの腫瘍 疾患や、時には横隔膜ヘルニアなどでも胸水の貯留が認められる.
水胸が認められる場合、腹水や心膜水腫あるいは四肢下端の浮 腫などを伴うのが通常であるが、
一般的には腹水に比べ水胸の発生頻度はそりほど多いものではない。
                            
      ☆膿胸
  化膿性胸膜炎ともいう。特に多量の膿性滲出液が胸膜腔に貯留する疾患を称して膿胸という。
内容は胸膜滲出液と本質的には同 じものであるが、主に膿胸の場合には細胞変性産物や多核性顆粒球
あるいは繊維素成分などがほかの場合の滲出液よりも多い。小 動物領域では猫によく認められる疾患であり、
犬では滅多に遭遇するものではなく、筆者もその経験はない。したがってここでは猫での経験と文献的知識を
もとに述べることにする。原因はさまざまで、異物の吸引による肺の穿孔や食道穿孔,咬傷,気管支胸膜瘻
あ るいは全身性敗血症などがあげられている。関与する細菌の種類もさまざまであるが、好気性菌と嫌気性
菌が関連することからその鑑別は特に重要となる。貯留する膿汁の性状は、おおむね悪臭を放つ黄赤色の
混濁不透明な粘稠性の液体で、比重は1,018以上,蛋白質含有量3g/dl以上でリバルタ反応陽性である。
症状も原因や病期,病変の程度によって異なるが、一般的には発熱,食欲不振,浅速性呼吸,咳嗽,胸痛,
脱水などが認められる.
 
         
         犬の診療最前線・INTERZOO より