☆椎間板ヘルニア  
  椎間板の変性に続発する椎間板の突出,脱出により脊髄の振盪,圧迫が引き起こされ,さまざまな
脊髄障害が生じる疾患である。 椎間板は環軸関節と仙椎を除く推体間に存在し,線維輪と髄核からなる。
線維輪は層状になった線維性構造であり,腹側の線維輪は 背側の2倍の厚みがある。そのため髄核を
取り囲む形となる。髄核はゼラチン様の細胞間物質であり若い個体ほど水分含量が多く,動的機能の
維持が可能であるが,加齢に伴い変性を起こし弾力性の低下が起こる。椎間板の変性には2つの型
がある。1つは髄核の軟骨組織による置換であり,軟骨形成異常犬種に遺伝的にしかも若い時期に
起こる。それらの犬種にはダックスフント,ペキニーズ,バセット・ハウンド,ビーグル,フレンチ・ブルドッグ,
ウェルシュ・コーギーなどがある。最終的には髄核の石灰化が起こる場合もある。もう1つは椎間板の
線維様変性であり,軟骨形成異常犬種以外の全犬種に5歳頃から生じ除々に進行する。椎間板の
変性により椎間板の含水量の低下低下が起こり,弾力性低下による脆弱化により椎間板の脱出,
突出が起こる。椎間板ヘルニアはHansenによりさらに以下の2タイプに分類される。
  @ハンセンT型:椎間板の変性により線維輪の破裂が生じ,変性した髄核が脊柱管内に脱出する。
  AハンセンU型:髄核物質の脱出は起こらず線維輪の膨隆による突出が生じる。
    椎間板ヘルニアは背側,側方向や腹側へも起こる。
 
    ☆脊髄炎   
  脊髄炎は脊髄実質と支持組織の炎症であり,髄膜の炎症である髄膜炎を伴う事が多い。
一般に若齡から壮齡の成犬に多く発症する。犬の脊髄炎にはさまざまな原因がある。
   ◇犬の脊髄炎の原因による分類
  1,ウィルス性:犬ジステンバー,狂犬病,ヘルペス,アデノウィルス,パルボウィルス。
  2,細菌性:ブドウ球菌,ぺスツレラ菌,
  3,真菌性:ブラストミセス症,アスペルギルス症,コクシジオイデス症,ヒストプラズマ症,
  4,原虫性:トキソプラズマ
  5,リケッチア性:エールリッヒア病,ロッキー山紅斑熱,
  6,寄生虫性:犬糸状虫症,キュテレブラ症,
  7,スピロヘータ-:ライム病
  8,突発性:肉芽腫性髄膜脳脊髄炎,ステロイド反応性髄膜脳脊髄炎,
      化膿性髄膜脳脊髄炎,非化膿性髄膜脳脊髄炎,
  
     ☆ライム病   
 
  ライム病とは,病原体であるスピロヘータのBorrelie burgdorferi近縁種(B.burgdorferisensu strict :
 ライムボレリア)によって,関節炎,神経症状,心筋炎および腎疾患のような臨床症状を呈する全身性疾患
である。感染するライムボレリアの種類によって,症状の発現様態に相違がある。B.burgdorferiのみが
存在する米国では関節炎が主体であるが,B.afzelii およびB.garinii が混在する欧州では神経症状
が優勢を占めている。B.afzelii および B.garinii のみが存在する日本ではもっぱら神経症状である。
ちなみにヒトでの特異的な症状といわれている遊走性紅斑は犬ではみられない。犬では中等度の発熱
を伴ってさまざまな神経症状が認められる。
   ◇原因
  病原体はスピロヘータ-科スピロヘータ-属に分類され,種は異なるが梅毒トレポネーマと同じ
グループに入る。従来,種名をborrelia burgdorferi と称し,1種1タイプとして扱われてきた。
現在では,抗原的,あるいは核酸の構成から,borrelia burgdorferi(B.b),Borrelia garinii 
(B.g),Borrelia afzelii (B.a),Borrelia japonica (B.j),に分類されている。このうち,
B.bは北米(カナダを含む)および欧州,旧ソ連邦,中国,朝鮮半島および日本に,B.jは
日本のみにそれぞれ存在する。しかし,日本のB.jによるライム病の発生はヒト,犬どちらでも
みられないので,本菌は弱毒ないし無毒と考えられている。これらの菌体はいずれもグラム染色
陰性で,平均7本の鞭毛を有し,培養は微好気的条件下で特殊培地にて6週間以上要する。
自然界においてライム病の感染が成立するためには,必ずマダニによる病原体の媒介が必要
とされる。ライムボレリアを媒介するマダニは世界で5種類が知られている。米国のIxodes pacificus,
Ixodes scapularis,欧州のIxodes ricinus および日本や旧ソ連邦,中国,朝鮮半島にいるIxodes 
persulcatus(シュルツェマダニ)が病原性のないボレリアを媒介する。なお,病原性のあるB.garinii,
B.afzeliiを媒介するシュルツェマダニは,日本では北海道の低地から日本中部の海抜薬800mの
山地にかけて生息している。 
 
 
 
                 犬の診療最前線・interzoo より