☆頭部外傷  
  頭部外傷とは頭部に衝撃が加わった時に発生する損傷病態の総称である。頭部の解剖にしたがって
分類すると,頭蓋軟部の損傷, 頭蓋骨の損傷,頭蓋腔内容の損傷である。実際の頭部外傷に際しては,
これらの損傷が単独に発生するよりも,幾つか重複して発生する事が多い。それは外傷後のある時点で
重複しているだけでなく,外傷後の時間的経過の上で重なってくることも多い。たとえば頭部打撃の直後
には頭皮裂傷と脳震盪とが合併し,その後数時間経過して急性硬膜外血腫が認められるというような事
である。この様な多面性を常に念頭に置き,頭部打撃後に発生し得る病態を予測しておく事が必要である。
   ◇原因
 頭部外傷は犬では比較的よく認められる疾患であり,通常は落下,殴打および交通事故の結果として,
頭部の裂傷や挫傷,頭蓋骨の骨折を来す。これらが原因で,硬膜下またはくも膜下の出血,骨折片の
脳実質への刺入,大脳皮質の虚血性層状壊死,脳実質内の出血,浮腫などを引き起こす。
 
     ☆特発性前庭疾患  
 主として老齢犬に起こる炎症病変を伴わない急性の前庭症候群。老齢性前庭疾患とも呼ばれる。
   ◇原因
    不明である。
               
 
     ☆下顎下垂症(特発性三叉神経症) 
  三叉神経(第X脳神経)の運動神経障害から咀嚼筋の一時的麻痺が生じる事によって起こる,
犬の急性発症の症候群。
  ◇原因
  免疫介在性が疑われている。病理組織学的所見から三叉神経のすべての運動神経技および神経節
に両側性の非化膿性神経炎がみられ,脱髄やときには神経線維の変性を伴う。咀嚼筋の病理組織学所見
としては,炎症性細胞浸潤を伴わない神経源性萎縮が認められる。予後は良好であり,通常,4〜8週間で
回復する。種や性差による好発性は認められない。
  
    ☆中耳炎・内耳炎
  中耳と内耳における炎症性疾患。
   ◇原因
 通常は外耳炎からの波及により生じる事が多い。原因菌としては,S.intermedius,Pseudomonas 
aeruginosa,Proteus mirabili s,Strepotcoccus spp.,Corynebacterium.,Escherichia coliなどが
よくみられる。また,Malassezia pachy-dermatisやcandidaのような酵母様真菌もまれに分離される。
まれに,細菌が口腔からの耳管を通じて上向性に内耳炎を起こす事がある。また,逆に内耳の感染病巣
から同様の経路を通じて口腔へ感染が波及する事がある。
 
     ☆顔面神経麻痺 
  片側あるいは両側性の顔面神経(第Z脳神経)障害に伴う顔面筋の麻痺。
  ◇原因
  急性発症の特発性顔面神経麻痺(原因不明)が犬で報告されている。その多くは5歳以上であり,
種としてはコッカ-・スパニエル,ウェルシュ・コーギー,イングリッシュ・セッター,長毛種に高い発生率が
みられるという報告がある。また,顔面神経麻痺を呈した犬と猫の95例から。犬では75%が,猫では
25%が特発性と診断された。他の原因としては,外傷,中耳炎・内耳炎,腫瘍がある。また,薬物毒性
(o,P’-DDD)や鉛中毒も原因となる事がある。機序は不明であるが,内分泌障害(甲状腺機能低下症,
副腎皮質機能亢進症,糖尿病など)においても認められる事がある。顔面神経の生検による病理組織学
所見では,有髄線維の径が太いもの,および細いものに顕著な変性が観察されている。炎症性病変は
認められていないが,シュワン細胞の増殖,副側突起の発芽,および種々のステージの脱髄がみられ,
これらの周りにマクロファージが集合している。予後としては約1〜2ヶ月でそのほとんどが回復するが,
それ以上経過したものでは治らない場合がある。                       
 
 
 
              犬の診療最前線・interzoo より