☆続発性(二次性)貧血 
多くは慢性に経過する全身性疾患に伴う貧血で,基礎疾患の治療により貧血の改善がみられるものをいう。
感染症,膠原病,悪性腫瘍,肝疾患,腎疾患,内分泌疾患に伴う貧血がこれに相当する。
一般に軽度から中等度の正球性正色素性貧血であるが,ときに小球性低色素性貧血のこともある。
   1,慢性感染症,慢性炎症,悪性腫瘍に伴う貧血
     慢性感染症,慢性炎症および悪性腫瘍はしばしば軽度ないし中等度の貧血を伴う。この貧血には
      血液像や鉄代謝に共通点がみられることから「慢性疾患の貧血」anemia of chronic disorders;
       ACDとして一括して取り扱われる。ACDの発生機序には赤血球生成能低下が考えられている。
       本態についてはまだ全貌が明らかにされていないが,鉄の輸送障害やエリスロポエチン産生
       不良または骨髄のエリスロポエチンに対する反応性の低下が考えられている。貧血は基礎疾患
      発症後1〜2ヶ月にかけて除々に進行していく。貧血の強さは基礎疾患の程度により左右されるが       
       溶血や出血を伴わない限り一般には軽度であり,犬ではPCVが20%以下になることはない。
      血清鉄は低下し,総鉄結合能(TIBC)は正常ないし低下する。したがってトランスフェリン飽和度
       は鉄欠乏性貧血ほどは低下しない。貯蔵鉄は正常か増加している。
   2,腎疾患に伴う貧血
     エリスロポエチンの産生低下による赤血球生成障害が貧血の本態である。さらに尿毒素物質が
      赤血球生成を抑制するともいわれている。また腎不全患犬の赤血球は寿命が短縮していることが
      多い。骨髄は正ないし低形成を呈し,低形成のばあいは赤芽球の減少による。鉄代謝は一定
      しないが一般に血清鉄は正常または低下し,TIBCも正常か低下する。
   3,肝疾患に伴う貧血
    慢性肝疾患に貧血の発生には以下のような種々の要因が複雑に絡み合っている。
     1)赤血球生成能低下:エリスロポエチン産生不全やビタミン12,葉酸の欠乏または利用障害,
        造血抑制因子の出現などによると考えられている。
     2)溶血:赤血球膜脂質異常や赤血球解糖系酵素異常,溶血因子の出現などによる赤血球寿命
        の短縮。
     3)出血:凝固因子の産生障害<腫瘍に伴う血小板減少などによる主に消化管出血。
 
     4)脾機能亢進:門脈圧亢進による脾腫は赤血球を貯留するため循環赤血球が減少する。
     5)循環血漿量の増加:低アルブミン血症による血液の希釈。骨髄は赤芽球系細胞が過形成のことが
        多い。血清鉄は正常のことが多いが急性肝炎では高値を示す。重度になればTIBCは低下する。    
4,内分泌疾患に伴う貧血
      ホルモンには直接あるいは間接的に造血に関係するものが多い。これらには
      @骨髄造血幹細胞への直接作用,
      A特異的エリスロポエチン産生刺激
      Bエリスロポエチン活性の増強
      C代謝に及ぼす影響を介してエリスロポエチン産生調節などの機序が考えられている。
        甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,副腎皮質機能低下症などにおいて貧血が認められる。
 
      ☆免疫介在性(自己免疫性)溶血性貧血                                     
免疫性溶血性貧血は自己免疫性,同種免疫性,薬剤起因性の3つのカテゴリーに分類される。
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)はなんらかの原因により自己赤血球膜上の抗原に対する抗体が産生され,
抗原抗体反応のために赤血球が障害を受け,溶血(血管内,血管外)し貧血を来す病態である。作用する
抗体が真の自己抗体かどうかはっきりとした証明がなされないため,最近は免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と
呼ばれている。IMHAは臨床的には特発性(原発性)と二次性(続発性,症候性)に分けられる。犬では特発性
のものが多い。        
 
           犬の診療最前線・interzoo より