☆妊娠診断 
  胎子の有無および妊娠日齡を早期に的確に診断することは,その後の飼育,管理に注意を払う事ができ,
流産を初めとする妊娠 中の病気,事故の未然防止につながる。また犬では,交配後不受胎であった場合でも,
発情後妊娠犬に類似の血中ホルモン動態を 示すため,偽妊娠を生じやすく,子宮蓄膿症の素因を有している.
これらを初めとする腹部の膨大を示す疾患や現象との鑑別のため にも正確な診断を下すことが重要となる。
   ◇犬の妊娠期間
  犬の妊娠期間はおよそ56日〜68日(平均64日)と大変幅があり,出産予定日を正確に予測することは
難しい。これは,犬種や 母犬の年齢,栄養状態などによっても多少の違いがあるが,むしろ,犬に特徴的な
卵巣周期によるもので,以下の事象が犬の出産 予定日予測を困難にしている。
  1)発情期間は約10日前後である。
  2)排卵の多くは発情開始後24時間〜72時間という初期の段階で起こる.
  3)卵子は卵母細胞として何時間かにわたって排卵され約24時間〜72時間かけて成熟
    第2卵母細胞となり初めて制止受精能を獲得する。また受精能保有時間も約5日間と長い。
  4)精子の雌体内での生存期間は交配後5日以上に及ぶ。
    受精日を妊娠初日とすれば妊娠期間は約60日〜61日であるが実際的ではない。しかし,雌犬の
    雄に対する許容状況から排卵日を予測して交配を行うことにより,妊娠期間および出産予定日を推定
     することは可能である。したがって交配が排卵前に行われた場合に比べ妊娠期間は長くなる。
 
     ☆偽妊娠 
  雌犬において,妊娠していないのにもかかわらず妊娠様徴候を示す場合をいう。犬において偽妊娠が
多くみられるのは,非妊娠犬 が発情後期に妊娠犬に類似した血中ホルモン動態を示すことに起因している。
犬では発情後妊娠が成立しない場合でも,機能性黄 体の存続により,血中プロゲステロン濃度は,妊娠犬と
同レベルの高濃度に維持される。通常,発情後期の終了に近づくにしたがい ,血中プロゲステロン濃度は
除々に減少し,それとともに血中プロラクチン濃度の上昇がみられる。この過程において,これらホルモンの
増減が著しく急激であった場合,妊娠後期から授乳期にかけての雌犬と同じ様の身体的もしくは行動上の
変化を来たす。
 
    ☆流産  
  胚や胎子が死亡すると,妊娠初期では吸収され,診断上不妊症との鑑別が難しい。妊娠後期に入ると
死亡胎子はミイラ変性や流 産を,末期では死産の転帰をとる。流産はその原因により,感染性流産と
非感染性流産に大別される。
  ◇原因
1,感染性流産
 1)プルセラ症
  治療の困難さおよび公衆生上の観点から重要視されている。わが国でも,各地の調査で数%の犬が
     Brucella canis の感染を受けていることが報告されている。
 2)妊娠期間中のヘルペスウィルス感染や細菌感染(子宮内膜炎・子宮蓄膿症),トキソプラズマ感染によっても
      流・死産に至ることがある。
 
2,非感染性流産
 1)黄体機能不全
   母犬の妊娠黄体の形成不全や妊娠黄体の早期退行などにより,血中プロゲステロン濃度が2ng/ml以下に
      低下すると,妊娠を継続できなくなり流産に至る。
 2)妊娠中の糖尿病発病あるいは糖尿病罹患犬の妊娠では,分娩期まで妊娠を維持
   させることは難しい。これは上昇した血中プロゲステロンがインスリンに拮抗的作用を有し,糖尿病の
     コントロールが困難となるためである。
 3)種々の薬物,毒物が胎子の死亡や催奇形成作用を有する。
 4)近親交配の反復および継続は,遺伝子に欠陥を生じさせ,先天性奇形や胎子死亡の原因となる。
 
    ☆難産 
  分娩の過程で人為的な介助医学手は処置をしなければ娩出不可能で,母体あるいは胎子に危険が
及ぶ恐れのある状態。異常 分娩あるいは分娩困難と同義。
  ◇原因
 1)骨盤狭窄(母犬の発育不良,骨盤骨折,遺伝など)
 2)胎子骨盤不均衡(小型犬,少ない胎子数など)
 3)外陰部伸張不良(初産の1頭めに多い。)
 4)原発性陣痛微弱(全身衰弱,虚弱,精神的ショック,低カルシウム血症,頻回分娩,肥満,運動不足)
 5)続発性陣痛微弱
 6)胎位,胎向,胎勢の異常                        
 

              
犬の診療最前線・interzoo より