☆急性腎不全 
  急性腎不全は数時間から数日の経過で、腎機能に重度な障害が生じ、ネフロン総数の75〜90%以上が
ダメージを受け、乏尿もしくは無尿となる。体内の老廃物が十分に排泄されずに、体液の恒常性が保たれなくなり
急速に尿毒症に移行し、
放置されれば死に至る。しかし本来可逆的な病態であるため、出来る限り早期に原因を
除去し治療を行えば、2〜3週間程で回復が可能である。しかし、慢性腎不全に移行する症例も多い。
   その原因を表1 に示す。
  表1 急性腎不全の原因
1.腎前性:循環血流量低下と腎動脈圧の低下を生ずる病態。
   例)熱射病,日射病,播種性血管内凝固,異型輸血,長時間の麻酔,外傷性出血,心機能不全,
     *動脈圧が80oHg以下で二時間以上経過すると尿細管細胞の壊死が起きる。
2.腎実質性:薬物中毒:例)抗生物質,抗真菌剤,重金属,有機物質溶媒:糸球体腎炎
        間質性腎炎:例)レプトスピラ症,腎盂腎炎,水腎症
     *腎実質性腎不全は糸球体,尿細管および間質の壊死,損傷,脱落などの
      病変によって起こるものである。
3.腎後性:尿路閉塞性:例)結石,腫瘍,前立腺肥大:尿管,膀胱,尿道の破裂もしくは裂断
 
    ☆慢性腎不全  
  慢性腎不全は数ヶ月から数年の経過で腎機能の障害が進行する。ネフロン総数に対する損傷の程度
または残存するネフロン数により4期に分ける。T期は腎臓の予備機能が低下した状態で、損傷した
ネフロン数はまだ50%以下である。一般臨床症状は現れない。U期は代謝性腎不全であり、
renal insuffi-ciencyの状態である。損傷ネフロンは50〜75%となっている。BUN,クレアチニンが上昇し、
ときに脱水型低ナトリウム血症,高リン血症をみる。またU期においてネフロンの代償が起こる。たとえば
残存ネフロンが30%存在するときに、ネフロンの代償が2倍程度起こった場合、60%の機能がカバーされ、
T期の状態になり、一時的に無症状となることが知られている。V期は非代償性腎不全であり、
renal failureの状態である。損傷ネフロンは75〜90%に至っている。高カリウム血症,高リン血症,
アシドーシスを呈してU期の症状が増悪し、口腔潰瘍や舌先端の壊死(血栓による)がみられることもある。
W期はいわゆる末期であり、損傷ネフロンは90%を超えており、乏尿,無尿となり、尿毒症症状を示す。
慢性腎不全は不可逆性であるため、いかなる治療を行っても腎病変を取り除く事は不可能であり、
T期からW期へと病態が進行し、体液の恒常性が保たれなくなり予後不良となる。     
  ◇慢性腎不全の原因
1.1歳未満の犬の慢性腎不全のほとんどは先天的腎形成異常によるものであり、低形成
      (ネフロン数がもともと足りない)、腎異形成(異常なネフロンが多い)血管奇形の場合などがある。
2.腎実質性疾患として糸球体腎炎,間質性腎炎,アミロイド腎症,ネフローゼ症候群,糖尿病腎症,
     腎性尿崩症,腎乳頭壊死,腎硬化症,萎縮腎などがある。
3.腎前性または腎後性の原因による急性腎不全の繰り返しにより腎実質性腎不全に移行した場合は、
    慢性腎不全となることがある。
   
      ☆水腎症(腎水腫)
  腎盂から尿道に至る尿路系に尿流の閉塞もしくは半閉塞が反復して、腎盂,腎杯が拡張して形態的,
機能的に異常を来し、進行すれば腎実質は萎縮する。水腎症は尿管腔内の75〜80%の半閉塞でも
発生し得る.尿路系の閉塞の発生率は猫より犬で高いとされている。原因は先天性と後天性とに大別される。
先天性水腎症は腎奇形,尿道奇形および狭窄,血管の異常走行などにより起こる。後天性水腎症は結石,
腫瘍,膀胱麻痺などによって起こるが,医原生に生じる場合もある。
 
       ☆腎性尿崩症
  下垂体後葉から抗利尿ホルモン(ADH)が正常に分泌されているにもかかわらず,腎臓の集合管,
尿細管の受容噐が病変により反応を示さないためにADHが作用せずに多尿,等張尿を示す。すなわち,
高窒素血症,腎不全症状を呈することなく,体液浸透圧の恒常性が保たれなくなる慢性疾患である。
腎性尿崩症には完全尿崩症と部分尿崩症とがある。
 
                犬の診療最前線・interzoo より