☆口腔内腫瘍 
  口腔内,すなわち口唇,舌,歯槽口蓋,口腔蓋,歯および関連構造に認められる腫瘍性疾患。
この部位でみられる良性腫瘍としては、非菌原生腫瘍として乳頭腫,線維腫,脂肪腫,軟骨腫,骨腫,
血管腫,血管外膜腫,組織球腫,エプリス,歯原生腫瘍としてエナメル芽細胞腫および歯牙腫などがあり、
特に乳頭腫およびエプリスなどにしばしば観察される。(これらについては別項参照)。本項目では
口腔内によくみられる悪性悪性腫瘍、すなわち悪性黒色腫,扁平上皮癌,および線維肉腫について述べる。
1.悪性黒色腫(メラノーマ)malignant mela-noma
     1)最もよくみられる口腔内悪性腫瘍(30〜40%)
     2)例外なく悪性(75%が悪性であるが、組織学的に良性でも悪性の挙動を示す。)
     3)粘膜皮膚移行部のものはほとんど悪性。
     4)小型犬に多発。 
     5)好発犬種:プードル,ダックスフント,スコッチ・テリア,ゴールデン・レトリーバー
     6)老齢犬で認められる。:4〜16歳(中央値11歳)
     7)雄に多発(雄:雌ー4:1)
     8)好発部位:歯肉(最も多い),口唇,舌硬口蓋
     9)ドーム状あるいは無茎状を呈する。
    10)黒色,褐色,灰色,斑点状の有色素性(3/2) あるいは無色素性(1/3)
    11)脆弱で、壊死,出血,潰瘍形成がみられる。
    12)進行は急速で、早期に歯肉や骨に浸潤する。
    13)発見時には60〜70%に転移がみられる。
    14)転移率は高いが、転移は局所処置後、時間をおいてみとめられることもある。
 2.扁平上皮癌 squamous cell carcinoma
       1) 2番目に多く認められる口腔内悪性腫瘍(20〜30%)
       2) 老齢犬で認められる。:平均年齢9歳
       3) 犬種および性別なし。
       4) 大型犬に多発。
       5) 好発部位:下顎吻側,扁桃,舌
       6) 進行は緩慢で、転移はまれ(20%)
       7) 直接的に拡大し、粘膜,粘膜下組織,筋肉,骨を侵す。(77%に骨浸潤が認められる。)
       8) リンパ節種大(このうち転移は20%)
       9) 潰瘍性噴火口状の形態を示す。
       10)扁桃および舌の扁平上皮癌は43%に転移がみられる。
       11)乳頭状扁平上皮癌は生後2ヶ月の若齡から発生する。
       12)吻側腫瘍は外科的によく反応するが、尾側のものは外科的に根治しにくい。          
3.線維肉腫 fibrosarcoma 
      1)若齡から老齢までみられる。 
      2)雄に多い。
      3)大型犬に多発。
      4)発見時には20%に転移がみられる。
      5)好発部位:頬粘膜,唇粘膜および歯肉。
      6)家宅、円滑または小結節状の腫瘤,表面は潰瘍を形成することもある。
      7)骨への浸潤はよくみられる。
 
   ☆口腔内乳頭腫  
  若齡犬にみられる良性腫瘍で、パポバウィルスに起因する。ウィルス感染により乳頭腫(パピローマ)が
形成され、腫瘍先端でウィルスの増殖が起こる。唾液を介したり、直接接触により容易に感染し、潜伏期間は
1ヶ月である。腫瘍は頻粘膜,舌,口蓋,咽頭,喉頭蓋,時には口唇に多発性腫瘤として認められる。
同様の腫瘍は皮膚や生殖器には腫瘍を形成しない。
 
      ☆巨大食道症
 巨大食道とは拡張して蠕運動の低下した食道を特徴とする疾患で、原因いかんに関わらず、単に拡張した
食道の呼称である。しばしば食道弛緩不能症(アカラジア)が巨大食道と同義語として使われるが、食道弛緩
不能症は蠕運動の消失に伴って発現し、下部食道括約筋が弛緩せず、強い緊張状態のまま保たれるために
逆流(吐出)が生じるものである。食道弛緩不能症は犬での報告は見当たらない。したがって、巨大食道の
同義語として使うべきではない。巨大食道は発症時の年齢と病因により分類することができる。
     ・先天性特発性巨大食道症
     ・成獣性特発性巨大食道症
     ・続発性(獲得性)巨大食道症
 先天性特発性巨大食道症,成獣性特発性巨大食道症の原因は分かっておらず、病巣部位,病体生理も
解明されていない。
続発性(獲得性)巨大食道症は多くの疾患から二次的に発症する。 
 
 

      犬の診療最前線・interzoo より