☆歯肉炎・歯周炎  
  歯周組織(歯を支える組織:セメント質,歯根膜,歯槽骨,歯肉)が破壊される疾患は歯周疾患とされ、
病態が発生している領域によって歯肉炎・歯周炎などの別がある。また、病態発現部が歯周組織に
あるという点からすれば、歯周部に原因がある歯牙疾患(歯頸部吸収病巣など)歯肉過形成症,
炎症性エプリスも含まれる。歯面に蓄積されたプラーク中の細菌の増殖およびその菌叢の変化に伴い、
歯肉および歯周組織に進行性炎症性病巣を形成する疾患をそれぞれ歯肉炎あるいは歯周炎とする。
  ◇原因(主因)による分類
  病態発生にはさまざまな要因が複合的に作用しているが、主として以下に大別できると考える。
  A.プラークや歯石の蓄積で発生する歯肉炎・歯周炎:歯肉構内プラーク中の細菌数の増加・歯叢の変化
       (好気性菌より嫌気性菌が 増加)によって、歯肉の炎症が生じ、さらにこれが処置されないと
         歯肉〜歯根膜のコラーゲン線維が破壊され、生体中の破骨細胞が誘導されて歯槽骨を破壊する
           (歯周炎の成立)
  B.生体の免疫機構が障害されているために発生する歯肉炎・歯周炎:歯肉構内に滲出する目上着
         グロビリン(1gA,G,M)や補体などの量的・質的不足によって日和見感染が成立する。
   ◇病態に関わる主な因子
     1.細菌性プラーク:糖蛋白・上皮細胞・炎症性細胞・脂質・炭水化物・無機質・水からなる基質内に
        細菌(縁上部:グラム陽性好気性菌,縁下部:グラム陰性嫌気性菌が優性)が増加している。
     2.歯石:プラークが唾液中の無機質によって石灰化したもの(犬では、主にカルサイトー炭酸カルシウム
         の結晶と少量のアパタイトーリン酸カルシウムの結晶)。歯石中の細菌は石灰化によりすでに
          死滅している。
     3.全身性代謝・機能障害:免疫抑制・免疫機能障害を引き起こす障害、血管炎を引き起こす病態
       (糖尿病)     
     4.食事,咬合,咀嚼運動,唾液の性状など。 
 
      ☆歯肉過形成症(歯肉増殖症)
 
   上下顎のすべての歯肉が著しく増殖する疾患である。
    ◇原因
  1.遺伝的な因子:家族的に発生することがあり、好発犬種としてコリー,シェットランド・シープドッグ,
      ボクサーなどがあげられる。
  2.薬物の投与:抗痙攣剤(フェニトイン,バルプロ酸ナトリウム)、カルシウムチャンネルブロッカー
     (オキソジピン,ニトレンジピン,べラパミル)、シクロスポリンの投与によって歯肉が増殖することがある。
            投薬を中止することによって正常に復することが多い。
 
    ☆乳歯残存  
  乳歯の残存とは、永久歯との交換の時期を過ぎても、歯根の吸収が起こらず乳歯が歯列内に残留
することで、乳歯の晩期残存ともいう。乳歯が残存すると、後継永久歯の萌出が遅れたり、永久歯の転位を
起こすことがあり、不正咬合の原因となる。また、歯垢や歯石が付着しやすく歯周病の原因にもなる。
犬では乳切歯と乳犬歯の残存で永久歯の転位による不正咬合を起こしやすい。乳臼歯の残存もみられるが
永久歯の不正咬合を起こすことは切歯や犬歯ほど多くない。猫での乳歯の晩期残存はまれである。
 
     ☆唾液腺炎
  犬には4つの主要な唾液腺が存在する。すなわち、耳下腺,下顎腺,舌下腺,頬骨腺,である。
唾液腺炎は唾液腺にみられる炎症反応であり、犬における発生はまれである。ただし、臨床的に認められる
ことはまれであっても、剖検時には局所的な炎症病変が認められる。唾液腺炎はほとんど原発性であるが、
周囲の組織の炎症が波及して二次的に発生することもある。唾液腺炎は特別な治療を施さなくても収まって
しまう事が多いが,唾液管に損傷があった場合には瘻管を形成することがある。
  ◇原因
 原因として@原発性,A外傷,B全身性のウィルス疾患(ジステンバー)があげられる。
 
     ☆唾液嚢胞
  唾液腺や唾液管の損傷の結果、組織内に唾液が漏れて貯留し、嚢胞を形成した状態。舌下腺と下顎腺が
最も侵されやすい。発生する部位により、次のように分類される。
   ・頸部唾液腺嚢胞
   ・舌下部唾液腺嚢胞(ガマ腫)
   ・咽頭部唾液腺嚢胞
   ・頬部唾液腺嚢胞
  唾液腺嚢胞は、ジャーマン・シェパードやトイ・プードル,ミニチュア・プードルでみられやすい。
 

             
犬の診療最前線・interzoo より